岩場環境整備に関する事項(ガイドライン)
~基本的なロッククライミングルートにおけるルートの再生~

2001年10月9日作成
2006年2月13日更新
2007年2月14日更新

2023年5月6日更新

(1)この活動の目的と組織

●この活動は、日本国内の岩場を安全にクライミングできるようにするための環境整備を目的としたボランティア活動であり、非営利活動を主旨とする。
●安全なクライミングに関する理解と啓蒙活動を行うこともこの活動の目的のひとつとする。
●参加希望者は、岩場環境整備に関する下記の注意事項を守れるひとなら誰でも参加できる。
●必要な資金は、個人、各種山岳団体、ショップ、メーカー等からの、会費、寄付や援助金とする。
●会計は担当者を決め、公開するものとする。
●代表と副代表及び事務局(会計を含む)を置く。運営委員会を設置して、ここで活動の本質的な内容を決定。また、必要に応じて、他の委員会を引き継ぐ。
●適宜、各種の科学的な実験、試験等を行う。
●個人情報を除外、すべての情報は公開、を原則とする。

(2)基本的な考え方

●岩場環境整備は、安全なクライミングに関する事項、ルートの再生、岩場及び付近の清掃活動、アクセス問題の解決などのクライミング環境保護等の内容を含みます。
●クライミングにおける多様性を保障する。
●再生は、頻繁に登られているルートを対象とする。
●近郊の特定のエリア、特定のアルパインエリア、山、あるいは山の一部は、本来の姿を維持するためにこれらの再生の対象から外すこともある。
●再生される上で、ルートの質(難易度、ライン等)を変えない。
●そのエリアをよく知っているクライマーを含む地域クライミンググループの助言、必要ならば、責任ある機関の元協力で再生の決定を行います。
●環境面で注意を要するエリアでは、永久的な整備は、最小限にとどめるべきである。
●ルートの再生は、公認された基準で責任ある組織の賛助の下で行われるべきである。
●アルパインルートにおいては、歴史において重要な時点( milesone)を意味するロッククライミングルートは、当時のままの姿で残すこと。
●自然環境保護は最優先されます。

(3)リボルティングをするひと

●そのルートかつ同等レベル以上のルートが登れるひとが行うことができる。スポーツクライミングルートの再生においては、5.12a以上のグレードが登れることが望ましい。
● リボルト作業にはリボルト講習あるいはそれと同等の講習を受けたひとがはいること。
●リボルティングを行う予定のあるときは、事前にこのグループ内で情報を流し、さらに、事前に周囲にアクセスすること。
●リボルティングを行ったときは、まず、グループ内に報告すること。

(4)初登者尊重の原則

●初登者がわかるなら、そのひとの許可を得てからリボルティングを行うこと。初登者の意思に逆らってリボルトを行ってはならない。
●リボルティング及びそれに伴う行為により、そのルートに特別に問題がない限り、ルートの質、ラインや難易度を変えるようなことは決してしない。
●ランディングランナウトしていてもそれが初登者の意志でありあきらかに特別な危険のない場合は途中でボルトを打ち足すようなことをしてはならない。ランナウトの緊張感をなくしてはならない。
●次のUIAAのガイドライン順守事項。もとのボルト数より少なくあるべきである。

(5)他のクライマー・グループの意見の尊重

●そのルートをよく登りこんでいるひとやグループが着陸するなら、そのひとやグループの意見を尊重すること。
●その岩場でよくクライミングをしているグループ、地元があるコミュニティなら、事前にそのひとたちと打合せを行い、理解を得てから行うこと。

●地域レベルでの決定権、全ての地域に独立した特徴を保障する。

(6)地元のひとの理解

●そのエリアが地元のひとにとって特別(あるいは宗教上のもの)でないことを確認すること。
●清掃活動等を行うことにより、地元のコミュニティの理解を得るように整えること。

●地権者の了解を得ること。

(7)ルートの再生

(a)残置ボルトの撤去
●リングボルト、RCCボルト、アルミ製ボルトハンガー、オールアンカー、カットアンカー、ケービング用のボルト類、クライミング用でないボルト類は原則として撤去の対象となる。各種のピトン類に関しては、その都度、吟味する必要がある。

(b)資材の選択
●全ての再生において、UIAAスタンダードに適合する、クライミング用の資材のみ使用すべきである。

(c)終了点
●ステンレス製のケミカルアンカー、またはウエッジ式タイプのアンカーを2本設置することを基準とする。直系12mm以上を推奨する。
●やわらかい岩にはケミカルアアンカーを使う。
●ナイロンスリング、ロープ等は撤去する。置きっぱなしにしない。
●立ちこんで終了するのか、立ちこまなくてもよいのか、初登時の環境を尊重して設置する。
● トップロープ用と称して、安易に終了点位置を変更しない(初登時の環境の尊重と同じ)。

(d)ルート上のボルト
●ステンレス製のケミカルアンカーの使用を基準とする。
  グルーは、HILTI  RE500の使用を基準とする。
  必要に応じてウエッジ式アンカーのステンレス製ボルトも使用する。
  ボルトの直径は、10mm以上のものを使うこと。
●やわらかい岩にはケミカルアアンカーを使う。
●そのルートのグレードに見合ったクライマーがクリーンに登れるかもしれないルートにはボルトを打ってはならない。
●クリーンに初登されたルート(ノット、フレンズ、スレッド等のみ使用)では、時代に逆行してボルトを打ってはならない。

(8)他の一般クライマーに対して

●ルート整備をしているときに、岩場に他のクライマーがいたときは、ルート整備の主旨と経緯を丁寧に説明し、理解を求めること。

(9)記録と公表

●活動の詳細な記録を公表すること。

●リボルティングしたルートに関しては、各種のメデイアに随時発表していく。
●公表は、リボルティングに参加したメンバー全員の同意を得てから行うこと。
●一年に一度は、活動をまとめた報告書を作成して好評すること。

(10)講習会

●必要に応じて、適宜、岩場環境整備のための講習会を行います。

(11)啓蒙、教育活動、交流活動

●適宜、地元のひとたちと交流するように取り組むこと。

●適宜、ロッククライミングの講習会等をひらいて、クライミングの啓蒙活動を行うこと

UIAAの考え方(一部抜粋、下記のホームページ参照)
    http://www.uiaa.ch/index.aspx http://ww w . uiaa.ch/?c= 1 80
    

まず、U IAA Moutaineering Commissionの要求に応じて、1998年にオーストリア・ドイツ山岳会(彼らは、すでにこの問題を話し合っていた)が、書類を作るためにワークグループを作った。使用に関して、情報は、1998年の11月12-13日にシャモニで開催されたENSAのような集合でも出されている。最終的に、この文章は、2000年5月のPlasy Brenin , Walesの合流の間に、 UIAA Councilによって承認された。

タイトル: UIAA Mountaineering Commissionによる「To Bolt Or Not To Be」
このプロジェクトには、次の方々にご協力いただきました。
Stefan Beulke、ドイツ山岳ガイド協会
Alexander Huber、プロの登山家
Nicholas Mailander、DAV
Andreas Orgler、登山家および山岳ガイド
Robert Renzler、OeAV
Karl Schrag、DAV
Pit Schubert、DAV-Sicherheitskreis

  1. ロッククライミングルートの再整備

標高の低い山脈や標高の低い地域でのクライミングの進化において、多くのクライマーは、十分に保護されたスポーツ クライミングや楽しいルートを好むようになりました。多くのアルパイン クライマーは、人気のあるロック クライミング ルートのピッチやビレイに適切なボルトを使用することを好みます。
一方、山を頻繁に訪れるクライマーの多くは、ロック クライミング ルートやエリアの本来の特徴を維持することに関心を持っています。彼らは、部分的または完全にボルトなしで行うことを好みます。

固定された保護を備えたロック クライミング ルートの装備の範囲と品質は、その人気に影響を与える効果的な手段です。十分に保護されたルートは、保護が不十分なルートよりも頻繁に行われます。したがって、生態学的に敏感な地域では、恒久的な保護を最小限に抑える必要があります。一方、あまり敏感でない地域では、十分に保護されたロック クライミング ルートを開発することで、より多くの登山活動の可能性を生み出すことができます。これらのガイドラインに沿って開発された登山エリアは、自然環境に脅威を与えません。

さまざまなクライミング ゲームの多元性は望ましく、クライマーの正当な個人的好みの表現として歓迎されます。この種の多元主義を推奨するために、次の推奨事項を作成します。

a) 再開発措置は、頻繁に登るルートの選択に限定する必要があります。
b) 特定の高山地域、山、または山の一部は、本来の性格を維持するために、これらの措置から除外される場合があります。
c) アルパインの歴史における特定のマイルストーンを代表するロック クライミング ルート (たとえば、アイガー北壁/ヘックマイヤー ルート、ラリデラーフェルシュナイドゥン、マルモラータ サウス スパー、パンプリッセ、グランド ジョラス北壁、 ウォーカーバットレス、ドリュー北壁、グレポンのトラバース、またはメイジュ)、元の状態のままにしておく必要があります。この原則は、地域的に重要なロック クライミング ルートにも適用されます (例: Untersberg の Gelbe Mauer Direct、Gehrenspitze の Battert Crack)。
d) ロック クライミング ルートの再開発の基本原則は、ルートの特徴がそのまま維持されることです。

  1. 初登者の登りのラインは変更されません。最初の登攀で「きれいに」行われたルートとシングル ピッチ (ナット、フレンズ、スレッドなどのみを使用) は、後付けで支点追加をしてはいけません。
  2. 最初の登りで「クリーン」に行われたルートとシングル ピッチ (ナット、フレンズ、スレッドなどのみを使用) は、後付けしてはなりません。
  3. そのルートのグレードのクライマーによってきれいにされた可能性があるルートのセクションには、ボルトは配置してはいけません。
  4. ランナウトは、追加のボルトによって軽減してはならない。 (ランナウトの状況を取り除かないでください)。
  5. ルートの難易度は、再開発手段によって変更されるべきではありません。最初の登攀者が残した支点は、再開発後に役立つはずです。再開発されたルートの永久保護の量は、元の部分の数よりも少なくする必要があります。例えば、複数の通常のピトンを 1 つのボルトで置き換えることができます。
  1. すべての再開発措置について、ヨーロッパおよび UIAA 基準に適合する材料のみを使用する必要があります。再開発は、責任ある管理組織の後援の下、認められた基準で実施されることになっています。
  2. ルートは、最初の登攀者の意思に反して再開発されるべきではありません。

e) クライミングエリアにおける再開発の有効なモードが定義されていますか? これらの推奨事項に基づいていますか?

再生は必要に応じて、責任ある当局と協力して、地元の登山グループと一緒に地元の知識豊富な登山家によって行われるべきである。地方レベルでの意思決定力は、すべての地域に独自の独立性を保証します。
地域のスチュワードシップ組織の活動は、水平および垂直方向の情報の流れを保証し、均一に高い品質のスチュワードシップを確保するために、超地域委員会によって調整されます。 委員会は、対立が生じた場合に調停します。

日本語訳

題目:「ボルトを打つべきか、うたざるべきか」

UIAA登山委員会による

以下の方々がこのプロジェクトに協力していただきました。
Stefan Beulke ドイツ登山ガイド協会
Alexander Huber プロクライマー
Nicholas Mailnder, DAV(Deutscher Alpenverein)ドイツ山岳会
Andreas Orgler クライマー、登山ガイド
Robert Renzler, OeAV(Osterreichischer Alpenverein)オーストリア山岳会
Karl Schrag, DAV
Pit Schubert, DAV-Sicherheitskreis ドイツ山岳会安全協会

3.ロッククライミングルートの再生(再開発?)
低い山だけならず、高い山の低い地域でクライミングが展開される中、多くのクライマーは安全対策がなされているスポーツクライミングやおもしろいルートを開拓している。 多くのアルピニストは、人気のあるロッククライミングルートのピッチやビレーポイントに良いボルトが打たれていることを望むことは言うまでもない。むしろ、足しげく山に行く多くのクライマーは、ロッククライミングルートやその地域の本来の姿を維持していると考えている。安全対策がなされているロッククライミングルートの整備の広がりや質は、人気度へ大きな影響を及ぼす。:安全対策されているルートは、そうでないルートよりより多く登られている。このため、環境面で注意が必要なシンプルエリアでは永久的な整備は、最小限にとどめすべきである。エリアでは、安全確保されたロッククライミングをたくさん開拓することによって、クライミングの可能性が広がる。

クライマー各個人には志向性があり、その自己表現の方法として、いろんなクライミングスタイルにおける多様性が大事であり、この多様性は、歓迎されるべきであり、その事を推奨する。

a)再生は、頻繁に登られているルートに限るべきである。

b)特定のアルパインエリア、山、または山の一部は、本来の姿を維持するためにこれらの再生の対象から外すことも可能である。

c)アルパインの歴史において重要な時点(milesone)を意味するロッククライミングルート
(例:アイガー北壁/ヘックマイヤールート, Laliderverschneidung,
マルモラータ南壁, Pumprisse,グランドジョラス北壁ウオーカー稜,ドリュ北壁,グレポンやメイジュのトラバースルート)は基本
の姿のまま残されるべきである。
この原則は特定の地域にとってロッククライミングルートが重要な存在である場合にも適応する
(例:ウンタースベルグのゲルベ・マウアー・ダイレクト、ゲーレンシュピッツェのバッタークラック)

d )ロッククライミングルートが再生される上で重要なことは、ルートの質が変わらないことである。

1.初登攀のラインは変えてはならない。

  1. 「クリーン」に初登されたルートやシングルピッチ(ノット、フレンズ、スレッド等のみ使用)では、時代に逆行してボルトを打ってはならない(should not be retrobolted )。
    3.そのルートのグレードに見合ったクライマーがクリーンに登れるかもしれないルートにはボルトを打ってはならない。
    4.ランナウトはボルトを追加することによって緩和されてはならない。
    (ランナウトの緊張感をなくしてはならない)
    5.ルートの難度を再生によって変えてはならない。設置するボルト類は、もとのピトンの数より少なくあるべきである。
    6.全ての再生において、ヨーロッパ及びUIAA規格に適合する資材のみ使用すべきである。
    7.ルートの再生は初登攀者の意思に反して行われてはならない。

e)クライミングエリアにおけるルート再生の有効な方法は、そのエリアをよく知っているクライマーを含む地域クライミンググループの助言、必要ならば、責任ある機関の協力のもとで決定が下されるべきである。

地域レベルでの決定権は、全ての地域に独立した特徴を保障する。

地域の責任ある組織の活動は、情報が縦にも横にも流れるように、そしてより上のレベルでの責任を確実にするために地域の上を行く委員会によって調整されるようにする。衝突があった場合にその委員会は仲介役となる。